まだ私が小学生だった頃、懐かしい昔の番組や懐かしの歌謡曲を流すテレビ番組を父はよく見ていた。
例えばゲバゲバのようなバラエティ番組だったり、あるいは狼少年ケンのようなアニメだったり、または高校三年生のような歌だったり。
横に座って私も時々見ていた。当然子どもには面白くない。
紹介される番組の大半は白黒だ。今でこそ白黒も味わい深く見られるが、当時の私には面白くもなんともない。色がないってほんとかよ!ただそう思っていた。
他の番組が見たいと主張しても、通らない。父は懐かしいと興奮して、盛り上がっている。やがて母もそこに入ってくる。そして同じく懐かしい盛り上がる。
つまらないので自室にこもるが、当時の子供部屋にはエアコンはなくて、夏場だといつまでもそこにはいられない。部屋にはテレビもなければ、当然スマホもPCもない。
結局しばらくすると、居間に戻るしかないわけだが、まだテレビは懐かしのナントカが続いている。
さて、翻って今の私の家の話だ。
まさに、あのときと同じように、私は見ているのだ。懐かしのナントカを!
あの頃こんなものが流行っていたとか、どの家にもこんなものがあったとか、そういうのを見て、しかも懐かしいー!とか言って興奮しているのだ。
そして小学生の息子はというと、たいへんつまらなそうにしているわけだ。
わかっているぞ、息子よ。これ、君には全く面白くないよな。知ってるんだ、私も。
これ懐かしいー!って、知らないよそんな話、だよな。
しかし断言しよう。
君もだ。君もきっとやるんだよ。私の父や、私がやったように、これ懐かしいといって昔のものをみて大騒ぎするのを。
大騒ぎしておいて、その自分を見てあー年取ったんだなあ、なんて思うこのよくわからない幸せと不幸せのごちゃ混ぜになった楽しみを。