路傍のフジイは何故面白いのか。何が魅力なのかを考える。
最大の魅力は藤井の存在だ。彼に惹きつけられて、私はあの漫画を読む。彼のことが見たい。周りの人に藤井がどんな反応をするか、どのようなことを言うかが見たい。
なぜ藤井が気になるのか。二つ鍵がある。
ひとつは、藤井の中に見える芯である。藤井は柔軟だが揺るがない。ブレない。しかし動きはする。柔軟だ。提案があれば、一旦受け入れる。全てを拒絶することはない。一度受け入れて、自分の尺度で判断して、それを継続して自分のものにするかどうかを決める。
藤井がなにを基準にして判断しているかは分からないが、確実にそこに彼なりの基準があることは読み取れる。それが藤井の芯の部分だ。そこに芯があることが分かるから、安心して彼を見ていられる。
藤井の芯は、彼の顔に明確に描かれている。細い線で描かれる人物が多いあの世界の中で、藤井はただ一人一直線に太い眉を授かっている。瞳は黒く、しかし濁ってはいない。やや俯き加減ではあるが、むしろそれが真っ直ぐな視線を生み出す。後ろ向きではないし、諦めてもいない、どちらかといえば挑戦的な視線だ。
その強い視線が、力強い眉と共に、藤井の中の強い芯を表す。
ブレない人間は、安心感を周囲に抱かせる。常にその人なりの基準を持ち、その基準に従って考え、行動する。柔軟性があったり、行動に変化があったりしても、それはその基準の範囲内のことであって、ブレではない。
だから、藤井を見ていると安心する。大丈夫だと思える。
藤井から目が離せないもう一つの理由は、他の登場人物の視線だ。彼らは藤井の芯の強さにもちろん気が付いている。そして読者にその強い芯の部分に安心して良いのだと促す。
彼らがいるから、藤井の芯の強さが明確になり、そして藤井に興味を持つことはなんら不思議なことではないという安心感が生まれ、ますます藤井から目が離せなくなっていく。