大袈裟に言えばそういうことになる。電動自転車が東京では最強の乗り物だ。
東京は、特に23区の西の方は坂が多いところだ。東はそうでもない。たとえば江戸川区などはずっと平たい。
しかし渋谷などを見てもやたら坂が多い。坂ばっかりだ。渋谷は谷とつく街だからとか言うが谷がついてもつかなくても坂が多い。
しかもただの坂ではなく、タコの吸盤のような丸い円が滑り止めでついているような、急な坂が多い。こういう坂は、とても普通の自転時では行く気にならない。
ところが電動自転車は、そういう坂をないことにしてくれる。まるでそこに坂がないかの如く、すいすいと自転車を進めてくれる。素晴らしい乗り物だ。
電動自転車によって何が得られるかというと、それは面としての行動範囲や広がりではない。直線距離でいうと、電動自転車も普通の自転車も案外行ける距離に変わりはない。電動自転車がどこで力を発揮するかというと、距離が近くても行けなかったところに行けるようになるときだ。
例えていうなら、昔懐かしのロールプレイングゲームで、海や川で遮られているところは低レベルではいけないが、やがて船を手に入れるとスイスイそこも渡れるようになるような、そういう感覚である。
円で囲めば行ける範囲はそれほど広がらないが、しかしその円の中で普通の自転車では辿り着けなかった地域に行けるようになるのが素晴らしい。
しかし、それは電動自転車以外の乗り物も得意なことである。それなのになぜ電動自転車が最強と言えるのか。
まず車と比較しよう。正直、遠くに行くなら勝てない。なぜなら遠くには行けないから。
だが例えば10キロ程度なら、勝負になる。特に都市部では。何より強いのは、車両を停める場所だ。つまり駐輪場の選びやすさだ。実は東京は駐輪場が多い。特に、大きなターミナル駅の周りに多い。例えば渋谷駅。マップで調べればわかるがそこかしこにある。どこかには停められる。
そして、駐輪場は安い。12時間停めても200円そこらですむ。その上だ。かなり高い確率で、無料の時間が設定されている。2時間無料が多い。これはつまり、電車で出かける人向けではなく、その街に来てちょっと買い物する人向けの駐輪場ということだ。
2時間あればいろいろできる。十分だ。もしも2時間で出なくても、12時間で数百円だ。大したことはない。
車ではそうはいかない。数百円では、下手したら20分も停められない。そしてそもそも空いてなかったりする。つまり、車で来ても、その後が大変になる。
バイクに対してはどうか。距離が長いと、車同様に負ける。そもそも電動だろうがなんだろうが自転車なので大した距離は走れない。
だが都市部はどうか。車よりはバイクは強いかもしれない。狭い道もスイスイだ。渋滞にも強かろう。
しかしやはり問題になるのはどこに停めるかだ。
駐輪場を探す中で気づいたのだが、実は案外バイク用の駐輪場もそれなりに都市部にはある。価格は知らない。
あれ、そうなるとバイクもいいな。まいった。どうしよう、もしかしたら電動自転車は単独最強ではなく、バイクと争うのかも知らない。