ヒソカとクロロが戦うシーン。私の好きな場面の一つだ。
二人とも敵役でありながら、かっこよく描かれるキャラクターで、この2人が出ていると華があるというか、とても絵面がしまる。そんな2人がいよいよ直接対決をするということで、それだけでも豪華な場面だと言える。
ところがこの場面、否定的な意見も多い。主な意見はこんな感じ。
- 唐突に戦いが始まりすぎる。それまでの暗黒大陸編の流れをぶった切る形で、大きなストーリーの邪魔になっている。
- 戦う場所などの設定が不自然。
- 描写がわかりにくい。読んでいてすぐに内容が入って来ない。スピード感がない。
- キャラクターが、絵柄も性格もこれまでと大きく変わりすぎている。(変化そのものは良いが、「悪化・劣化」している)
- 単行本での解説が言い訳じみている。
こんなところだろうか。そもそもこの場面が必要ないという意見から、細かな絵柄や、週刊連載後の作者自らの解説など、いろいろな観点から否定されている。
まあ、これらの指摘はぶっちゃけ正しい。私は集英社のアプリで読んだが、あまりにも突然2人が戦い始めたので1話読み飛ばしてしまったかと勘違いした。なので、唐突に始まりすぎ、という意見もわかる。
描写がわかりにくいというのも納得。一つ一つの能力の名前とその性質を覚えておっていくのは、時には楽しいこともあるが、ヒソカ対クロロの場合はちょっと面倒に感じた。
でも、私自身は本当はこういうくどくど説明くさい書き方だったり、読み噛まなければならない情報が大量に出て来るような書き方は嫌いではない。たとえば、グリードアイランド 編だと、カードの一覧が複数ページに列挙される場面があった。ああいうのは、とっても楽しい。いろんなことを考えるもんだなーと、素直に感動したりして、細かく見てしまう。
ところがヒソカ対クロロはどうもしんどかった。面倒くさいという言い方がぴったりな感じだ。だから、描写がわかりにくい、という指摘も納得。
あとは、連載後の解説についての指摘。まあ、これも納得。自分で解説するのって、ダサいよね、という意見には同意するしかない。
この否定的な意見にそれだけ同意するなら、なんでこの場面が好きなのよ、ということになるが、実はその理由はとても小さい部分にある。
(ここからごく若干のネタバレを含みます。ご注意ください。)どの部分かといえば、ヒソカが人の頭をもって、それを武器にして戦い続けるという部分。これだ。
ヒソカは冷徹で、人間のことを大切にする気持ちなんてこれっぽっちもないわけだが、それをわかりやすく表現している箇所だ。
成人男性の頭部はだいたいボウリングの玉と同じぐらいの重さである、という説明を入れつつ、誰かの頭部をまるでネットに入れたサッカーボールか何かみたいに自分の能力で手にぶら下げで、それを振り回して相手を攻撃する。
とてもわかりにくいヒソカ対クロロのシーンにおいて、とってもわかりやすくヒソカの性格とか考え方とか、そういったものが表現されている。
とにかくずっと頭をもっているので、クロロが色々と練った戦い方を仕掛けて来るのに対してヒソカも考えを巡らすシーンでも、その手には長い間人の頭が握られている。その頭は、死人のものだから生気はなく、ただ白目を向いて口を開けて引っ張られているだけ。
そのことをヒソカもクロロもその他の登場人物も特に気にする様子はない。
だれかからナイフを奪って、それで戦っているのと同じくらい、当たり前のことのように、誰かの頭部を持ってそれを振り回して武器にして戦っていることが描かれる。
この辺に注目して読んでいると、実はむしろこの場面のスピード感のなさがぴったりだった。頭をもったまま、色々考え事をしていたり、次の攻撃に備えていたり、一体何をやっているんだと思えてきて、かなりユニークな印象をうけた。
否定的な意見もあり、その根拠にも納得するが、私が好きな頭ぶん回し戦法を含めてなんともいえない面白い要素がたくさん盛り込まれている場面であり、私はやはり好きな場面だ。